はじめに
私は介護施設で15年以上働く中で、介護×仕事の両立ができずに、介護離職を選ぶご家族を何人も見てきました。
けれど、少しの知識と準備があれば、「辞めるしかない」状況を防げる可能性もあるのです。
この記事では、「介護離職」「失業保険」「助成金」の3つの視点から、仕事と介護を両立するために知っておきたい制度をわかりやすく解説します。

介護離職しても失業保険はもらえる?もらえない?
「親の介護で仕事を辞めるしかないかも…でも失業保険ってどうなるの?」という不安、よく聞きます。
結論から言うと、介護を理由に退職した場合でも失業保険(正式名称:雇用保険の基本手当)を受給できる可能性があります。
「特定理由離職者」に該当するかがカギ!
特定理由離職者とは
自己都合退職とみなされつつも、「やむを得ない事情」があったと認められる人のこと。
タイプ | 待機期間 | 特徴 |
---|
自己都合退職 | 3か月給付制限あり | 原則的な取り扱い |
特定理由離職者(介護など) | すぐ受給 or 短縮 | 書類提出で特例適用されることも |
介護が理由の退職であれば、この「特定理由離職者」として認定されるケースがあるので、
退職前に相談しておくことが大切です。
スムーズに受給するための3つの準備
【STEP 1】退職を考えている?
↓
はい
↓
【STEP 2】理由は「家族の介護」?
↓
はい
↓
【STEP 3】退職前にハローワークへ相談した?
↓
はい ───────────→【◎】特定理由離職者として申請の準備OK
↓
いいえ
↓
【×】自己都合扱いで待機期間が延びる可能性
【申請準備チェック】
☑ 離職票に「介護が理由」と明記
☑ 介護保険証
☑ 主治医の意見書 or ケアマネの記録など
これらの準備が不十分だと「通常の自己都合退職」として扱われ、支給まで3カ月待たなければならないケースも。
だからこそ、“辞める前”の行動がとても大切です!

介護離職を防ぐのに使える制度はある?
「辞める前提」ではなく、辞めないために使える制度を2つ解説します。
介護休業制度
✅ どんな制度?
- 要介護状態の家族1人につき、最大93日まで介護休業を取得可能。(3回まで分割OK)
- 給付額は休業前賃金の67%程度(条件あり)雇用保険加入者であれば「介護休業給付金」も支給対象に!
✅ 対象者と条件
- 雇用保険に1年以上加入している
- 事業主に申し出て、介護休業を取得すること
- 介護対象家族の状況が要件に該当する
「いったん仕事を休んで考える」選択肢として、離職を防ぐために非常に有効な制度です。
時短勤務やフレックスタイム制度の活用
- 時間単位の年休
- 時差出勤や在宅勤務なども含めて、会社によって柔軟な対応が可能なケースも
🔸 会社の就業規則や人事担当に、早めに相談することがカギです。

介護離職の前後で使える助成金って?
介護を理由に「退職前」も「退職後」も、実は活用できる助成制度があります。
「両立支援等助成金」
社員が介護休業や短時間勤務を取得した企業に対し、国から助成金が支給されます。
- 中小企業の場合、最大36万円(※介護離職防止支援コースの場合)
- 社員本人には直接支払われませんが、制度を利用しやすい職場づくりの後押しになります。
「再就職手当」
✅ どんな制度?
失業保険受給中に早期就職が決まった場合に最大70%の手当が支給されることもある手当。
✅ 受給条件
- 失業保険の受給資格があること
- 所定給付日数の3分の1以上を残して再就職したこと
- ハローワークを通じて就職活動を行っていること
🔍「ブランクが心配…」という方でも、ハローワークや自治体の再就職支援を活用すれば安心です。退職後の再就職に役立ちます。
「高年齢求職者給付金」
✅ どんな制度?
65歳以上で退職した人向けの一時金型の失業手当です。
高齢の家族を介護するために退職した場合でも、条件を満たせば対象になります。
✅ 対象者と条件
- 雇用保険に一定期間以上加入していた人が対象
- 退職理由や雇用形態によって金額が異なる
💡会社を辞めても、年齢に応じた支援があることを知っておきましょう。
3つの支援制度を比較してみよう!
項目 | 両立支援等助成金 | 再就職手当 | 高年齢求職者給付金 |
---|---|---|---|
対象 | 事業主(企業側) | 失業保険受給中の求職者 | 60~64歳の求職者(条件あり) |
支給対象者 | 介護と仕事を両立する従業員の雇用主 | 早期に再就職した本人 | 一定条件を満たす本人 |
支給金額 | 最大36万円(介護離職防止支援コースの場合) | 基本手当の最大70%(条件による) | 最大50日分の基本手当相当額 |
支給タイミング | 介護との両立継続が確認された後 | 再就職から1ヶ月後~ | 申請後に支給 |
ポイント | 会社が申請。制度がやや複雑 | 早く就職すると多くもらえる | 雇用保険の加入期間が短くてもOK |

まとめ
介護は突然始まることも多く、「もう辞めるしかない」と思い詰めてしまう方も少なくありません。
でも、辞める前に「知っておく」だけで選択肢が広がります。
辞める前にできること
✅ 退職前にハローワークで相談
✅ 「介護休業」の検討
✅ 家族やケアマネジャーと、今後の見通しを共有
「仕事か介護か」ではなく、「両立する」選択肢を持つために、
この記事が、あなたやご家族の助けになれば嬉しいです。
