高齢者が話さなくなるのは認知症のサイン?【現役STがやさしく解説】

話す食べる相談室

「最近、うちのおばあちゃん、全然しゃべらないのよね…」

「返事はうなずきだけ。なんだか心配…」 そんな風に感じたこと、ありませんか? 

私は介護施設や病院で15年以上、言葉や飲み込みのリハビリを行ってきました。

その中でご家族からよく聞くのが、「最近、親があまり話さない。認知症かもしれない…」という不安です。

この記事では、「高齢者が話さなくなる=認知症なのか?」という不安の答えと、

「話さないことのリスク」「話す力を支える工夫」について、言語聴覚士の視点からやさしく解説します。

今できる対処法についてお伝えしますので、ぜひ参考にしてみて下さいね。

「高齢者が話さない=認知症」ではない理由3つ

たとえば、食事中も無言、テレビを見ていてもリアクションが少ない。

そんな姿を見ると、「もしかして認知症が進んでる?」と感じるのも無理はありません。

ですが、実は「話さない」状態の背景には、いくつかの要因が考えられます。

加齢にともなう聞き取りづらさ

加齢とともに聴力が落ちると、相手の話が聞こえづらくなり、会話への参加が難しくなります。

すると自然と会話量も減っていくのです。

言葉が出にくくなる病気の可能性

脳梗塞やパーキンソン病などでも、言葉が出づらくなることがあります。

この場合、思っていることはあるのに、うまく言葉にできず、黙ってしまうことが多いです。

会話する機会が減っている

一人暮らしや高齢者夫婦のみの家庭では、そもそも話す機会が少ないため、

言葉を発する習慣自体が減ってしまう傾向にあります。

「話さなくなる原因のまとめ」

原因内容
加齢による聞き取りづらさ聴力の低下により、会話が聞こえづらくなり、話す機会が減る
言葉が出にくくなる病気の影響脳梗塞やパーキンソン病などで、言葉をうまく出せなくなって黙ってしまうことがある
会話の機会が少ない一人暮らしや会話のない生活環境で、話す習慣がなくなる

話さない状態が続くとどうなるの?

高齢者が話さなくなると、単に「静かになったなあ」というレベルの変化ではありません。

実は、会話力や表情の動きが衰え、身体機能にも影響を及ぼすことがあるのです。

表情が乏しくなり、無表情になる

会話の減少は、顔の筋肉を動かす機会が少なくなるということ

表情が乏しくなり、「何を考えているのか分からない」と感じることもあるかもしれません。

また、表情の変化が少ないことで、周囲とのコミュニケーションもさらに減ってしまう悪循環に陥ることがあります。

声が小さくなり、聞き取りづらくなる

話す機会が減ると、声帯や口まわりの筋肉が衰え、声がかすれたり、小さくなったりすることがあります。

たとえば、若い人でも長期休暇のあとや、在宅勤務が続いてほとんど人と話さなかったとき、いざ声を出そうとすると「うまく声が出ない」「思ったより声が小さい」と感じたことはありませんか?

これは、使わないことで声を出す筋肉や感覚が鈍ってしまうためです。

高齢者の場合は、この変化がもっと顕著に現れやすく、聞き返されることが増えたり、声を出すのが億劫になってますます話さなくなる…という悪循環に陥ることもあります。

食べこぼしやむせが増える

実は、「話す」「食べる」「飲み込む」は、共通の筋肉や神経を使っています。

そのため、話す機能が低下すると、食べる力や飲み込む力にも影響が出る可能性があるのです。

たとえば…

  • 食事中に口からこぼすようになる
  • むせやすくなり、水分摂取に苦労する

といった変化が現れることがあります。

【話さないことで起きる変化のまとめ

話さないことで起きる心身の変化
内容:
・表情が乏しくなる
・声が小さくなる
・食べこぼし、むせが増える

コミュニケーションの減少


さらに話さなくなる

ご家族にできること・3選

「話さないから」とあきらめてしまわず、まずは以下のようなサポートを意識してみてください。

積極的に声かけをする

「今日はいい天気だね」「お茶飲もうか?」など、答えを求めない会話でもOK

一方通行でも刺激になります。

答えやすい質問をする

「お昼はうどんとそば、どっちがいい?」など、
選択肢のある質問うなずきで答えられる問いかけが効果的です。

安心して話せる環境をつくる

特に男性は「うまく言えない自分を見せたくない」と感じて黙ることがあります。
「ゆっくりで大丈夫だよ」とプレッシャーをかけない対応が大切です。

専門家の支援も視野に入れる

言語聴覚士(ST)によるリハビリでは、
「話す」「飲み込む」機能を維持・回復する訓練が可能です。

利用できる支援の一例

支援内容利用先・方法
訪問リハビリケアマネジャー経由で申し込み可
介護予防教室地域包括支援センターで開催、無料や低価格が多い
通所リハビリやデイサービス会話訓練を兼ねた交流の場としても活用できる

「最近、あまり話さないな…」と思ったら、
地域包括支援センターやケアマネジャーに一度相談してみましょう。

まとめ

話さない=ただの沈黙ではない

「最近話さないなあ」と軽く見過ごすのではなく、心身の機能が少しずつ低下しているかもしれません。

  • 話さない=認知症とは限らない
  • 早めの声かけや工夫で改善の余地がある

「言葉の変化に気づいたとき」が、サポートを始めるチャンスです。

話す力は「生きる力」
できることから、やさしく、楽しく始めてみませんか?

ご家族の「なんとなく気になる」という感覚を大切にして、早めに声かけや支援につなげていくことが大切です。

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