
「最近、おばあちゃんの声が小さくなって聞き取りづらいのよね」

「うちの母もよ。昔はもっとハキハキ話してたのに…」
こんな話、ママ同士の会話でもよく出てきます。
私自身、言語聴覚士として働いていると、ご家族から“声のかすれ”や“小声”の相談を受けることも増えてきました。
年のせいかな?と思いがちですが、実は放っておいてはいけないサインのこともあるんです。

加齢による「声の変化」はどうして起こるの?
声帯の筋力低下が主な原因
年齢とともに、喉や声帯の筋肉が衰えることで、声帯がうまく閉じずに息漏れが起こり、
声がかすれて聞き取りづらくなることがあります※1。
声帯がやせ細ってしまう状態を「声帯萎縮」と呼びます。
年齢とともに多くの方に見られる変化です。
その他の要因
- 喉の乾燥
- 声帯粘膜の水分減少
- 呼吸機能の衰え
- 嚥下機能の低下
これらが重なって、声が続かない・話すのがしんどいなど、日常生活に支障を感じるようになります。
声の変化で起きる困りごと
「名前を呼ばれても返事が聞こえない」「宅配の対応で聞き返される」など、
声の小ささは日常生活に思った以上の不便を生みます。
病院や公共の場で名前を呼ばれても気づかれず、本人が“声を出すこと”をあきらめてしまうケースも。
すると次第に会話が減り、気持ちの落ち込みや孤立感にもつながっていきます。

母、最近ほんとにしゃべらなくなった気がして…。
「声が出しにくい」→「話すのがおっくう」→「人と関わるのが減る」という負のスパイラルになる前に、早めの対処が大切です。

こんな変化があれば、要注意!
- すぐに声がかすれる・疲れる
- 話すのがつらそう・会話を避ける
- むせる・痰が絡むようになった
2週間以上、声のかすれが続いていませんか?
「たかが声」と見過ごすのは危険です。
嚥下障害や反回神経麻痺、喉頭がんなど、専門的な診断が必要なケースもあります※2・3。

思い当たることがいくつもある…。やっぱり受診してもらった方が安心かも。
声に関係する病気にはどんなものがある?
声帯や喉の病気
- 声帯ポリープ、声帯結節、ポリープ様声帯
- 喉頭がん、甲状腺がんによる反回神経麻痺
脳や神経に関係する病気
- パーキンソン病
- ALS(筋萎縮性側索硬化症)
- 脳卒中後の構音障害・声帯麻痺
高齢者ではこれらの病気が「声の異常」として最初に現れることもあるため、声の変化は軽視できません※3。
どこに相談したらいいの?
まずは耳鼻咽喉科を受診し、声帯や喉の異常がないかを確認するのがおすすめです。
病気が見つからなかった場合でも、音声リハビリが必要なケースは言語聴覚士(ST)が対応します。
- 総合病院のリハビリ科・耳鼻科など
- 地域の高齢者向け通所リハビリ
- 市町村の介護予防教室や健康相談窓口
地域によっては、自治体が高齢者向けの「声のトレーニング教室」を実施している場合もあります。
広報誌などで確認してみましょう。

“声トレ”で改善できるケースも
すぐに病院受診が必要なケースもありますが、筋力の衰えによる声の変化であれば、リハビリ(音声訓練)で改善できる場合もあります※4。
- 深呼吸や腹式呼吸で声を出す練習
- 音読や早口言葉
- 会話の機会を増やす習慣
自宅でできる簡単な声トレは、次回の記事で詳しく紹介します。

「もう少し様子見ようかな」と思っている方へ
「本人が気にしていないし…」「大げさにしたくない」
そう思って様子を見たくなる気持ち、よくわかります。
でも、声のトラブルは、早めに動いた方が回復しやすいんです。
この先の「話す力」を守るためにも、小さな変化を見逃さず、気づいた今がチャンスです。
まとめ
高齢者の声の変化は、加齢だけでなく病気のサインであることもあります。
声の変化は「体からのメッセージ」です。
「声が小さくなった」「話すのがつらそう」と感じたときは、様子を見すぎず、早めに医療機関や専門家に相談しましょう。