はじめに
介護が必要になったとき、避けて通れないのが「お金の話」です。
介護費用は、要介護度や暮らし方によって何倍も違うことがあります。
「特養は安いけれど入れない」「有料老人ホームは高すぎる」「老健は長くいられない」
——介護現場でよく聞く声です。
この記事では、厚生労働省や民間調査のデータをもとにした費用目安と、
年金額をもとにしたリアルな支払いシミュレーションを紹介します。
後半では、「介護費用を事前に試算できる無料ツール」もまとめています。
ご家族の将来設計に、ぜひ役立ててくださいね。

要介護度別にかかる介護費用の目安
介護度が上がるほど、利用するサービスの量や内容が増え、費用も高くなります。
まずは主な介護施設ごとの月額費用を確認しておきましょう。
| 施設名 | 入所対象の要介護度 | 月額目安(自己負担+食住費) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 在宅介護(訪問・通所など) | 要支援1~要介護5 | 約2~7万円 | 自宅で介護保険サービスを組み合わせて生活 |
| 介護老人保健施設(老健) | 要介護1~5 | 約9~13万円 | リハビリ中心の中間施設。医療ケアも受けやすい |
| 特別養護老人ホーム(特養) | 要介護3~5(原則) | 約8~12万円 | 公的施設。長期入所が可能で費用を抑えやすい |
| サービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホーム | 要支援~要介護5 | 約12~25万円 | 民間運営。自由度と快適さを重視 |
※費用は厚生労働省「介護給付費等実態調査」(令和5年度)をもとに算出。地域差や加算によって実際の負担額は異なります。
🏠 在宅介護の場合
- どんな施設?:自宅で介護サービスを組み合わせて利用(訪問介護・デイサービス・訪問看護など)
- 利用対象:要支援1〜要介護5まで幅広く対応
- 費用の目安:月約2〜7万円(介護度・利用回数による)
- 特徴・ポイント:家族の支援体制が整っている場合に向く/住宅改修や福祉用具の活用が大切
🏥 介護老人保健施設(老健)の場合
- どんな施設?:リハビリを中心に、在宅復帰を目指す中間的な施設
- 入所対象:要介護1〜5(医療的ケアが必要な人も比較的受け入れやすい)
- 費用の目安:月約9〜13万円
- 特徴・ポイント:利用期間は3〜6か月程度/退所後の在宅生活を支援
🏡 特別養護老人ホーム(特養)の場合
- どんな施設?:長期的に暮らせる公的な介護施設
- 入所対象:原則として要介護3以上
- 費用の目安:月約8〜12万円
- 特徴・ポイント:「補足給付(食費・居住費の軽減制度)」が利用可能/入所待機が長い地域もある
🏢 サービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホームの場合
- どんな施設?:介護・医療・生活支援がセットになった民間施設
- 入所対象:要支援〜要介護5まで対応(施設により基準あり)
- 費用の目安:月約12〜25万円
- 特徴・ポイント:設備やサービスが充実/家族の負担軽減・快適さ重視の人に人気

介護費用シミュレーション|夫婦と単身でどれだけ違う?
老後の家計は、収入(年金額)と支出(介護費用)のバランスで大きく変わります。
とくに夫が先に亡くなった場合(妻単身)は、国民年金のみの収入となり、介護費用の負担が重くなる傾向があります。
ここでは、夫婦世帯は夫が厚生年金+妻が国民年金、妻単身は国民年金のみを受給しているケースで比較しています。
| 世帯構成 | 平均年金月額(参考) | 介護費用目安(月) | 家計への影響 |
|---|---|---|---|
| 夫婦世帯(厚生年金+国民年金) | 約22万円(夫:約16.8万+妻:約5.3万) | 約8.3万円 | 生活費と介護費を両立しやすい |
| 妻単身(国民年金のみ) | 約5.6万円 | 約5.7万円 | 年金のほぼ全額が介護費用に。貯蓄の取り崩しが必要に。 |
※年金額は厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」に基づく平均値(夫:厚生年金16.8万円/妻:国民年金5.3万円)。
※妻単身は国民年金(老齢基礎年金)の平均受給額約5.6万円を使用。遺族厚生年金は含みません。
※介護費用は厚生労働省「介護給付費等実態調査」による在宅介護の平均値。
📊 年金だけでまかなえるか?
| 施設種別 | 月額費用目安 | 厚生年金夫(14.6万円) | 国民年金妻(5.7万円) |
|---|---|---|---|
| 在宅介護 | 5〜10万円 | ◎ 年金でカバー可 | ✕ 赤字の可能性 |
| 特養 | 8〜12万円 | ◎ ほぼ年金内 | △ やや赤字 |
| 老健 | 10〜13万円 | △ ぎりぎり可 | ✕ 大幅赤字 |
| 有料老人ホーム | 20〜30万円 | ✕ 赤字必至 | ✕ 赤字必至 |
夫婦世帯では「在宅・特養・老健」は年金範囲でやりくり可能な場合もありますが、
単身になると在宅介護でも赤字になりやすく、貯蓄や制度利用が欠かせません。

介護費用シミュレーションをしてみよう
実際に要介護度ごとにかかる介護費用を試算してみましょう。
厚生労働省の公式サイトでは、全国共通で使える無料の介護費用シミュレーターが用意されています。
入力はかんたんで、要介護度・利用したいサービスの種類・回数を選ぶだけ。
数クリックでおおよその月額費用を確認できます。
👉 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」でシミュレーションする(無料)
※このシミュレーションは介護保険サービスの自己負担額(1〜3割負担)の概算を確認するためのものです。
※食費・居住費・日常生活費などは含まれない場合があります。
※結果は目安のため、実際の契約内容・地域・施設により異なります。
知っておきたいポイント3選
🔹 介護度は変化する
要介護3から始まっても、数年で要介護5になることも珍しくありません。
費用は増加していく前提で考えておくと安心です。
🔹 入居金+月額を両方チェック
有料老人ホームは「入居金ゼロ」でも、月額が高い場合も多いです。
総額で比較しましょう。
🔹 制度で軽減できる場合も
「高額介護サービス費制度」「社会福祉法人による減免制度」などを活用すれば、
自己負担を抑えられることがあります。まずは市区町村窓口で相談を。
まとめ
介護費用は、「要介護度」と「施設の種類」で大きく異なります。
夫婦世帯では在宅・特養なら年金内で収まるケースもありますが、
単身高齢者は赤字リスクが高いのが現実です。
早めの情報収集と試算が、家族の安心につながります。
施設費用の全体像を知ることが、後悔しない介護準備の第一歩です。
老後資金の増やし方については、
専業・扶養内パートでも安心!老後資金を今から増やす5つの工夫もあわせてどうぞ。

