はじめに
「認知症と診断されたけれど、このまま犬を飼い続けても大丈夫なのかな?」
そんな不安を感じたことはありませんか。
長年一緒に暮らしてきた犬は、親にとって大切な家族です。
だからこそ、
- 散歩は続けられる?
- 犬の世話はちゃんとできる?
- 家族は止めた方がいいの?
と悩む方も多いでしょう。
一方で、認知症だからといって、すぐに犬との暮らしを諦める必要はありません。
私は言語聴覚士(ST)として高齢者のリハビリに携わる一方で、30年近く犬と暮らしてきました。
仕事では認知症の方やそのご家族と関わり、家庭では犬との生活を続けてきたからこそ感じることがあります。
それは、犬は単なるペットではなく、親にとって大切な家族であり、生きがいにもなる存在だということです。
だからこそ大切なのは、「認知症」という病名だけを見るのではなく、親にどんな変化が現れているかに気付くことです。
この記事では、認知症の親が犬と暮らし続けるために、家族が見守りたいポイントを、言語聴覚士(ST)と犬の飼い主、両方の視点からお伝えします。
🐶 犬との暮らしは認知症の人にも良い影響が期待される3つのこと
犬との暮らしが生活のリズムにつながることもある
犬と暮らしていると、毎日の生活に自然と役割が生まれます。
例えば、
- 朝夕の散歩
- ご飯の準備
- ブラッシング
- トイレの片付け
こうした習慣は、毎日の生活リズムを整えるきっかけになります。
「今日は散歩へ行こう。」
「そろそろご飯の時間だね。」
そんな毎日の積み重ねが、生活に張り合いを与えてくれる方も少なくありません。
会話や笑顔が増えるきっかけになることもある
犬は、人とのつながりを広げてくれる存在でもあります。
散歩中に近所の方と挨拶を交わしたり、犬の話題で会話が弾んだりすることがあります。
家の中でも、
「今日は元気だね。」
「ご飯おいしかった?」
と自然に話しかける機会が生まれます。
こうした毎日のやり取りは、親にとって楽しみや生きがいにつながることがあります。
「認知症が改善する」とは言えない
犬を飼っている高齢者は認知症の発症リスクが低かったと報告した研究もあります。
しかし、これは**「犬を飼えば認知症を予防できる」と証明したものではありません。**
散歩による運動や、人との交流、生活リズムなど、さまざまな要因が影響している可能性があります。
そのため大切なのは、「犬を飼うこと」ではなく、親が安心して犬と暮らせる環境が保たれていることです。
🍀 「認知症だから」ではなく親の変化を見守ることが大切
認知症と診断されても、これまで通り犬の世話を続けられる方はたくさんいます。
一方で、認知症ではなくても体力や判断力の低下によって犬との暮らしが難しくなる方もいます。
だから、「認知症だから犬は飼えない」と決めつける必要はありません。
家族が見てほしいのは、以前と比べて何が変わってきたかです。
犬の世話に時間がかかるようになった。
そんな小さな変化は、親が一人で頑張り過ぎているサインかもしれません。
認知症の進行だけでなく、体力や生活環境の変化も含めて見守ることが大切です。
🔗親が話さなくなった原因について詳しく知りたい方はこちら
▶「最近、親が話さなくなった?認知症だけじゃない原因と寄り添い方」
🐕 家族が見守りたい犬との暮らしの5つのサイン
認知症になると、ある日突然犬が飼えなくなるわけではありません。
生活の中に少しずつ変化が現れます。
その変化に早く気付き、家族が少し手を貸すことで、これまで通り犬と穏やかに暮らせる方も少なくありません。
🐕 家族が見守りたい5つのサイン
☑ 犬のご飯や水を忘れる・何度も与える
☑ 散歩へ行かなくなった・散歩中に迷う
☑ リード操作や転倒が心配になった
☑ 犬の体調変化に気付きにくくなった
☑ 犬の世話だけでなく、生活全体にも変化が出てきた
犬のご飯や水を忘れるようになった
▶ 関連する認知症の症状:記憶障害(物忘れ)
「ご飯をあげたかな?」
「まだだったかな?」
と何度も確認したり、反対に食事を忘れたりすることがあります。
これは認知症で見られる記憶障害の影響かもしれません。
同じ日に何度もご飯を与えてしまうと、犬の健康にも影響します。
食事の時間をチェック表で管理したり、家族が一緒に確認したりすると安心です。

散歩へ行かなくなった・散歩で迷うようになった
▶ 関連する認知症の症状:見当識障害・注意機能の低下
以前は毎日欠かさず散歩へ行っていたのに、
「今日は疲れたからやめよう。」
そんな日が増えていませんか。
また、
- いつもの散歩コースで迷う
- 帰る時間が以前より遅くなる
- 信号や車への注意が散漫になる
このような変化は、見当識や注意機能の低下が関係している可能性があります。
犬の散歩は運動だけでなく、人との交流や季節を感じる大切な時間です。
だからこそ、「散歩へ行かなくなった」という変化は、親自身の生活や社会とのつながりが変わってきたサインかもしれません。
家族も一緒に散歩へ行ったり、コースを短くしたりするなど、無理なく続けられる方法を考えてみましょう。
リード操作や転倒が心配になった
▶ 関連する認知症の症状:判断力・注意機能の低下
犬が急に走り出したり、他の犬に反応して引っ張ったりすることは珍しくありません。
以前なら対応できていたのに、
「最近ふらつくようになった。」
「リードを持つのが危ない。」
そんな変化はありませんか。
認知症では判断力や注意機能が低下し、高齢になると筋力やバランス能力も低下します。
転倒は骨折や寝たきりにつながることもあるため、家族が散歩を分担したり、一緒に歩いたりすることも大切です。
犬の体調変化に気付きにくくなった
▶ 関連する認知症の症状:注意力・観察力の低下
犬も年齢を重ねると、病気や体調不良が増えてきます。
しかし認知症になると、
- 食欲が落ちた
- 歩き方が変わった
- 元気がない
といった小さな変化に気付きにくくなることがあります。
これは愛情がなくなったのではなく、注意力や観察力の低下が影響している場合があります。
家族も一緒に犬の様子を確認すると安心です。
犬の世話だけでなく、生活全体にも変化が出ていないか確認しよう
▶ 関連する認知症の症状:遂行機能障害・生活機能の低下
犬の世話だけが難しくなることは、あまりありません。
例えば、
- 薬を飲み忘れる
- 通院を忘れる
- ゴミ出しや掃除が難しくなる
- 犬のワクチンや受診時期を忘れる
このように、生活全体の管理にも変化が現れていることがあります。
犬との暮らしは、親の生活の変化に気付くきっかけにもなります。
「犬の世話は大丈夫かな?」だけでなく、「生活全体はどうかな?」という視点で見守ることが大切です。
🤝 家族が少し支えるだけで続けられることもある
犬との暮らしを続けるために、家族がすべてを代わりに行う必要はありません。
例えば、
- 散歩だけ家族が担当する
- ご飯や薬の時間を一緒に確認する
- 動物病院へ付き添う
- ドッグフードなどの買い物を手伝う
こうした小さなサポートだけでも、親の負担は大きく減ります。
大切なのは、
「もう無理だからやめよう」
ではなく、
「どうすれば続けられるだろう」
という視点で考えることです。
一人暮らしの場合は、犬の世話だけでなく生活全体の安全も確認する必要があります。
🔗認知症の親の一人暮らしについて詳しく知りたい方はこちら
▶「認知症の親を一人暮らしさせて大丈夫?家族が確認したいサイン」

🌿 まとめ|親にも犬にも安心できる暮らしを家族で考えよう
認知症になったからといって、すぐに犬との暮らしを諦める必要はありません。
大切なのは、「認知症」という病名ではなく、親にどんな変化が現れているかに家族が気付くことです。
犬は親にとって、毎日の生活に張り合いを与え、心を支えてくれる大切な家族です。
だからこそ、「飼える・飼えない」の二択ではなく、親にも犬にも無理のない暮らしを家族みんなで考えていきましょう。
🔗高齢者と犬との暮らし全体について詳しく知りたい方はこちら
