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最近、親が話さなくなった?認知症だけじゃない原因と寄り添い方

心配そうに母親に声をかけようとする娘のイラスト。静かなリビングで向かい合う親子が、会話のきっかけを探している様子を描いたアニメ調のやさしい絵。 話す食べる相談室
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はじめに

「最近、話しかけても返事が減った」「食卓でも黙っていることが増えた」
——そんな小さな変化に、ふと不安を覚えることはありませんか。

「もしかして認知症の始まり?」
「それとも、体の調子が悪いのかな…?」

長年見てきた親だからこそ、いつもと違う“沈黙”に気づくものです。
けれど、「話さなくなる=認知症」ではありません。
耳の聴こえづらさや体の変化、気持ちの落ち込みなど、さまざまな要因が関係していることがあります。

この記事では、現役の言語聴覚士(ST)の視点から、
親が話さなくなったときに考えたい原因と、家族ができる寄り添い方をやさしく解説します。


高齢者が話さなくなる=認知症?と思いがちな理由

会話が減ると、「認知症の始まりでは?」と感じるのは自然なことです。
実際、認知症では以下のような変化が見られます。

  • 言葉が出にくくなる
  • 反応が遅くなる
  • 理解に時間がかかる
  • 意欲が低下する

そのため「話さない=認知症」と考えてしまいがちですが、
“話さなくなる”という行動には他にも多くの背景があります。
たとえば「聞き取りづらくて会話が負担」「話すのがつらい」「気持ちが沈んでいる」など。
本人にしかわからない“話したくない理由”があるのです。

親が話さなくなるときに多い5つのサイン

ここでは、現場でよく見られる5つの原因と観察ポイントを紹介します。
まずは、主な原因を一覧で見てみましょう。

原因よくあるサイン・観察ポイント
聴こえづらさ(加齢性難聴)聞き返しが増えた/返事が遅い/テレビの音量が大きい
発話の障害(脳梗塞・パーキンソン病など)滑舌が悪い/声がかすれる/言葉が出にくい
気持ちの落ち込み・意欲低下表情が少ない/ため息が増える/話すのを避ける
口や喉の衰え(口腔・発声・嚥下の問題)声が出にくい/むせる/食べこぼす
会話機会の減少(環境要因)一人暮らし/外出減少/話し相手が少ない
「耳に手を当てる人」「口を押さえる人」「咳き込む人」「黙って考える人」など、話さなくなる原因を表した4人の高齢者のイラスト(話す気がしない様子も含意)。

それぞれの原因について、もう少し詳しく見ていきましょう。

①聴こえづらさ(加齢性難聴)

聞き返すのがつらく、黙ってしまうケースは多くあります。
「最近テレビの音が大きい」「返事が遅い」などはサインのひとつ。
話しかけるときは正面から、ゆっくり・はっきり伝えましょう。


② 発話が難しくなる病気(脳梗塞・パーキンソン病など)

「言いたいのにうまく話せない」状態は、構音障害や失語症などの可能性も。
声や滑舌に変化が出ていないか、気をつけて観察しましょう。

👉 関連記事:高齢者の声がかすれる原因とは?放置NGの病気サインを見逃さない


③ 気持ちの落ち込み・意欲低下

配偶者の死や環境の変化などで、話す気力が落ちていることもあります。
無理に話を引き出そうとせず、安心できる時間を一緒に過ごすことが大切です。


④ 口や喉の衰え(発声・嚥下の問題)

声が出にくくなる、むせる、食べこぼすなど、
口の筋力や発声機能の低下が関係していることもあります。
「うまく話せない自分が嫌」と感じて、会話を避ける人もいます。


⑤ 環境の変化・会話機会の減少

一人暮らしや外出機会の減少などで話す機会が減ると、
“話す筋力”そのものが衰えてしまいます。

短い会話でもいいので、**毎日1回“声を出すきっかけ”**を意識して作りましょう。

👉 関連記事滑舌が悪くなった?“話が聞き取りづらい”ときのチェックポイント

“話さない状態”が続くと起こる変化

会話が減ると、表情が乏しくなったり、声がかすれてきたりします。
さらに「話す力」と「飲み込む力」は密接に関係しており、
声の衰えが嚥下機能(飲み込み)にも影響することがあります。

話さない状態を放置せず、
「声」「表情」「反応」など小さな変化を観察しましょう。

👉 関連記事:現役STが教える!誤嚥性肺炎予防に効果的なトレーニングと生活の工夫

家族ができる寄り添いと声かけの工夫

  • 短い言葉でゆっくり話す(相手の反応を待つ)
  • 「はい」「うん」で答えられる質問を増やす
  • 相手の言葉をくり返して受け止める(例:「そう思うんだね」)
  • 思い出の写真や昔の話題をきっかけに会話を広げる

会話の目的は「話を続けること」ではなく、
**「気持ちが伝わること」**です。

無理に話させようとせず、安心できる空気づくりを意識しましょう。

穏やかな笑顔で向かい合い、静かに会話をする母と娘のアニメ調イラスト。温かい光が差し込むリビングで、やさしい時間を共有している様子。
「話を聞くだけでも、気持ちは伝わります。」

受診・相談を考えるタイミング

  • 表情や声、食事量の変化が見られる
  • 返事に時間がかかる・言葉が出にくい
  • 以前よりも反応が少ない

こうした変化が1か月以上続く場合は、
かかりつけ医や地域包括支援センター、言語聴覚士(ST)への相談を検討しましょう。

※この目安は、厚生労働省や日本言語聴覚士協会が推奨する基準にも基づいています。


まとめ:親の“沈黙”には理由がある

親が話さなくなった背景には、認知症以外にもさまざまな要因があります。
「話さない」ことを責めず、なぜ話さなくなったのかを一緒に探す姿勢が大切です。

家族の声かけや関わり方で、親の表情が少しずつ戻ることもあります。
今日からできる小さな寄り添いを、ひとつずつ始めてみましょう。

地域包括支援センターの相談窓口で、安心した表情の女性が相談員と向かい合って話しているアニメ調のイラスト。柔らかい光とパステル色で、温かく穏やかな空気を描いている。
「不安なときは、一人で抱え込まないで。」

💡 相談できる窓口・参考リンク

日本言語聴覚士協会「言語・発声・嚥下の相談窓口」
言語聴覚士に相談できる内容や、地域の相談先を紹介。

認知症の人と家族の会
家族同士の相談・交流・支援情報が充実。

地域包括支援センター
高齢者支援・介護・認知症相談の総合窓口。

▶ 厚生労働省 e-ヘルスネット「認知症」

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