はじめに

「親の介護が必要かも…でも、老人ホームって実際いくらかかるの?」
介護施設で10年以上働いている私が実感するのは、「費用の見通しがつかなくて、動けない」ご家族が多いことです。
私自身も、仕事を始めたばかりの頃は「介護施設=老人ホーム=高い」というイメージしかありませんでした。
この記事では、よくある老人ホーム6種類の特徴と費用の目安をわかりやすく解説します。
「特養は安いけど入れない?」「民間施設って高いの?」という疑問を解消し、次の一歩を踏み出す参考になれば嬉しいです。
老人ホームの種類と費用の目安
老人ホームと一口にいっても、さまざまな種類があります。
例えば「手厚い介護が受けられる場所」もあれば、「自立に近い方向けの住まい」も。
まずは、代表的な6種類を押さえておきましょう。
特別養護老人ホーム(特養)
・「終の棲家」として人気の公的施設
・月額費用が抑えられ、軽減制度あり
・要介護3以上で、待機者多数
介護老人保健施設(老健)
・医療ケア・リハビリで在宅復帰を目指す施設
・原則3か月、延長可
・要介護1以上。退院後に案内されることが多い。
介護付き有料老人ホーム
・介護サービスが月額に含まれる民間施設
・食事や生活支援、医療連携あり
・入居金0円〜数千万円、月額も高め
住宅型有料老人ホーム
・訪問介護サービスを外部利用
・自立〜軽度向け、自由度高め
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
・バリアフリー+見守り・生活支援つき賃貸住宅
・自立〜要介護1〜2の方向け
ケアハウス(軽費老人ホーム)
・公的支援により月額費用を抑えやすい
・全国的に数が少ないのがネック

費用相場をざっくり比較!
種類 | 主な特徴 | 対象者 | 費用の目安 |
---|---|---|---|
特別養護老人ホーム(特養) | 低価格で人気、公的施設 | 要介護3以上 | 入居金0円 月額7〜15万円 |
介護老人保健施設(老健) | リハビリ・医療ケアが中心 | 要介護1以上 | 入居金なし 月額7〜15万円 |
介護付き有料老人ホーム | 手厚い民間介護施設 | 要支援〜要介護 | 入居金0〜数千万円 月額15〜30万円 |
住宅型有料老人ホーム | 自由度高く軽度向け | 自立〜要介護 | 入居金数十万〜数千万円 月額10〜25万円 |
サ高住 | 見守りつき賃貸住宅 | 自立〜要介護(軽度) | 入居金0〜数十万円 月額10〜20万円 |
ケアハウス | 軽費で公的支援あり | 自立〜軽度介護 | 入居金数十万円 月額6〜15万円 |
費用以外で見落としやすい3つのポイント
① 入居一時金の有無
高額な入居金が必要な場合も。最近は「0円プラン」もあるが、月額費用が高めに。
② 介護保険サービスの負担割合
特養などは1〜3割負担。民間施設は保険外サービスが加算されることも。
③ 医療ニーズへの対応
認知症や持病がある場合、医療体制が整った施設を選ぶ必要あり。
一時金にまつわる誤解や注意点
有料老人ホームでは、入居時に数百万円〜数千万円の「入居一時金」を支払う契約がいまも一部に残っています。
これは居室を一定期間専有するための“場所代”で、月額費用から徐々に償却(差し引き)される仕組みです。
しかし、「入居直後に入院・退去したが返金がなかった」というケースもあり、契約前にしっかり確認しないと、思わぬ損失につながるおそれがあります。
契約前には、以下のポイントを必ず確認しましょう:
- 初期償却期間の有無:契約後すぐに解約しても返金されない期間があるか
- 返金条件:退去や入院の際、どのような場合に返金されるか
- 不在時の費用:例)入院中も管理費などの月額費用が発生することがある
最近では、こうしたトラブルを避けるために「一時金なし」の月払いプランを選べる施設も増えています。どちらが合うか、施設の担当者とよく相談し、ご家族とも共有しておくことが大切です。
※不安な場合は、消費者庁「高齢者の住まい選びの注意点」や、厚生労働省「有料老人ホームに関する制度等」もあわせて確認すると安心です。

「老健=ずっと住める」の誤解
老健は仮住まい
現場でよくあるのが「老健に入ったら、ずっと安心」という誤解です。
実際には老健(介護老人保健施設)はリハビリ目的の中間施設。原則3か月で、長期的に住み続けることを前提とした「終の棲家」ではありません。
入所できるのは原則3〜6か月で、症状や回復状況に応じて退所を求められるケースが多く見られます。
突然の退所通告もあるため、老健は「仮住まい」であることを理解したうえで、早い段階から次の住まいの候補を考えておくことが大切です。

まとめ
老人ホームの費用は、施設によって大きく異なります。
「高いから安心」「安いから不安」ではなく、「本人の状態に合っているか」が最も大切です。
だからこそ、早い段階で情報収集をして、
「うちの親にはどのくらいの予算で、どんな施設が合いそうか」
という相場感をもっておくと、選択に自信が持てます。
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