はじめに
高齢の家族が「最近むせやすい」「飲み込みに時間がかかる」「咳が増えた」──そんな変化を感じたことはありませんか?
高齢者の“むせ”の背景には、舌や呼吸筋の衰え、口の中の細菌増加などが関係しており、放置すると誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
従来の「パタカラ体操」などに加え、近年は舌圧・呼吸筋トレーニング・口腔ケア・嚥下チェックが注目されています。
この記事では、現役STの立場から、家庭でも実践しやすい最新トレーニングを紹介します。
| 目的 | トレーニング名 | 主な効果 |
|---|---|---|
| 飲み込み力を上げたい | 舌圧トレーニング | 食べ物を押し出す力/発音の明瞭化 |
| 咳や声の弱さが気になる | 呼吸筋トレーニング | 咳反射の向上/発声持続時間アップ |
| 口の中を清潔にしたい | 口腔ケア | 細菌の減少/肺炎予防 |
| 状態を知りたい | 嚥下スクリーニング | 飲み込み状態のセルフチェック |
① 舌圧トレーニング:飲み込み力の“原動力”を鍛える
なぜ舌圧が大切?
食塊(食べ物のかたまり)をのどへ送る際、舌が上あごを押す力(舌圧)が必要です。
舌圧が低下すると食塊が残りやすく、むせ・誤嚥につながります。
舌の筋力低下は舌の挙上動作が難しくなるケースが多く、とくに「持ち上げる」動きを取り戻すことを意識しましょう。
自宅でできる方法
①スプーンを舌の上に軽くのせ、前・左右・上方向へ押し上げる:各方向5回×2セット
⇒舌をまんべんなく動かすことで、嚥下に必要な「舌の持ち上げ力」と「押し出す力」を同時に鍛えられます。

②舌を上あごにつけ、強くはなす“舌打ち”を10回。
⇒「チッ、チッ」とリズミカルに音を出すように意識して行いましょう。
③「た・な・ら」行をゆっくり、はっきり発音。
⇒各5回ずつを目安に行うことで、舌の速さと明瞭な発音を保つトレーニングになります。
現場でも舌圧トレを導入しています。スプーン押し上げや舌打ちの継続で、「飲み込みやすい」「話し方が明瞭になった」と感じる方が多いです。
おすすめ商品2選
📝ペコぱんだ 舌圧トレーニング用具(基本セット)
現場でも定番の「ペコぱんだ」。
硬さを変えて使うことで、舌の持ち上げる力を自然に鍛えられます。
📖 『舌圧トレーニングで免疫力が上がる!健康になる!』(元島道信 著)
写真が多く、実践しやすい内容。
家族で一緒に「舌を鍛える」意識を持つきっかけになります。
② 呼吸筋トレーニング
呼吸筋と嚥下の関係
呼吸筋は咳反射や嚥下動作と連動します。
呼気圧が弱いと誤嚥時に十分な咳が出ず、肺炎リスクが上がります。
呼吸筋を鍛えることで、嚥下の「押し出す力」や発声の持続にも好影響が期待できます。
自宅でできる方法
呼吸筋を鍛えるトレーニングとしておすすめなのが、**「拭き戻し笛」や「ブローイング(息吹き)」**です。
息を吐く力(呼気圧)を鍛えることで、誤嚥時に咳き出す力=“排出力”を高めることができます。

▶ 拭き戻し笛
- 吹くだけで笛が伸びるシンプルな器具。(100均や駄菓子屋さんに売ってます)
- チューブの長さで負荷を調整できるため、初心者から高齢者まで無理なく使えます。
- 目安:1回5〜10吹 × 2セット
- 楽しく続けられる点が魅力で、呼吸筋リハビリの導入にも最適です。
▶ ブローイング(ストロー練習)
- ストローの先に洗濯ばさみをつけて空気抵抗を作り、息を「ふーっ」と吐き出す。
- または、コップに入れた水へストローを差し込み、泡を出すように「ふーっ」と吹く練習も有効。
- 水の量が負荷の調整目安になります。少量から始めて、慣れたら水を少しずつ増やしましょう。
💡どちらの方法も、息を長く吐くことを意識して行うのがポイント。
肩や首に力が入らないよう、リラックスして続けてください。
🍀現場でも 呼吸筋トレーニングを継続した方は、
声量の増加、発声の持続時間延長などを実感されるケースが多くみられます。
おすすめ商品
📝 「長息生活(吹き戻し笛)」は、呼吸筋を楽しく鍛えられるリハビリ器具。
レベル0〜2まで段階的に負荷を調整できるので、
初心者から高齢者まで安心して呼吸筋トレーニングが行えます。
📖 『長生きしたければ「呼吸筋」を鍛えなさい』(本間生夫 著)
呼吸筋の重要性と自宅でできる基本トレをやさしく解説。
息をしっかり吐く・咳き出す力がつくことで、食べ物の誤嚥を防ぐサポートになります。
③ 口腔ケア:肺炎予防の“第一防線”
なぜ肺炎予防につながる?
口腔内で増殖した細菌が唾液や食べ物とともに気道へ入ると、誤嚥性肺炎の引き金になります。
特に食後は細菌が増えやすく、ケアの有無でリスクが左右されます。
最新エビデンス(2024年)
毎食後のブラッシング+口腔保湿の組み合わせで、肺炎発症率が有意に低下したと日本歯科医師会が報告(参考文献①)。
日常で実践したいポイント
毎日のポイント
・歯磨き(毎食後)+入れ歯・舌・頬の内側の清掃
・口腔保湿ジェル/スプレーの活用(ドライマウス対策)
・就寝前もうがいまたは保湿
④ 嚥下スクリーニング:家庭でできる“むせチェック”
自宅で簡単にできるチェック方法
代表的な方法
・水飲みテスト:3mlの水を一気に飲み、むせの有無を確認
・反復唾液嚥下テスト(RSST):30秒間で唾液を何回飲み込めるか(3回未満は注意)
受診の目安と相談先
むせ・咳の増加、飲み込みの遅れ、水でもむせる。
──こうしたサインが続く場合は、早めに言語聴覚士(ST)または耳鼻咽喉科へ相談しましょう。
まとめ:最新トレーニングで“むせない毎日”を
誤嚥性肺炎は年齢とともにリスクが上がる一方、日々のトレーニングと口腔ケアでしっかり予防できます。
舌圧・呼吸筋・口腔ケア・嚥下チェックの4本柱を暮らしに取り入れ、「むせ」や「誤嚥」を減らしていきましょう。無理なくできるものを1つから。小さな積み重ねが大きな予防につながります。
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🏠 自宅でできるおすすめ商品&書籍
記事内で紹介したトレーニングを続けるためのおすすめ器具と書籍をまとめました。
どれも現場で実際に使われているものや、専門家監修の内容です。
🦷 舌圧トレーニング
📝 ペコぱんだ(基本セット)
3段階の硬さで段階的に練習可能。舌の持ち上げる力を無理なく鍛えられます。
📖 『舌圧トレーニングで免疫力が上がる!健康になる!』(元島道信 著)
写真が多く、自宅でも安全に取り組める内容。家族と一緒に実践しやすい1冊です。
🫁 呼吸筋トレーニング
📝 長息生活 吹き戻し笛(レベル0〜2セット)
吐く力・咳き出す力を楽しく鍛えられるリハビリ器具。誤嚥予防や発声の改善にも◎。
📖 『長生きしたければ「呼吸筋」を鍛えなさい』(本間生夫 著)
呼吸筋を鍛える重要性と具体的なトレーニングを紹介。誤嚥予防にも応用できる内容です。
📚 参考文献
- 厚生労働省(2023)「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」 参照:厚生労働省公式サイト
- 日本歯科医師会(2024)「口腔ケアと誤嚥性肺炎予防に関する報告」 参照:日本歯科医師会公式サイト
- 本間生夫(2023)『長生きしたければ「呼吸筋」を鍛えなさい』幻冬舎
※各情報は2025年10月時点の公開内容をもとにしています。


