はじめに

「最近、おばあちゃんの声が小さくなって聞き取りづらいのよね」

「うちの母もよ。昔はもっとハキハキ話してたのに…」
こんな小さな変化に気づいたことはありませんか?
私自身、言語聴覚士として働いていると、ご家族から“声のかすれ”や“小声”の相談を受けることも増えてきました。
高齢者の声がかすれる状態は、加齢による自然な変化のこともありますが、実は病気のサインであることもあります。
この記事では、高齢者の声がかすれる主な原因や、放置してはいけない危険なサイン、家族ができるサポートの方法について解説します。

高齢者の声がかすれる主な原因5選
加齢による声帯の衰え(老人性発声障害)
年齢を重ねると筋肉が弱くなるのと同じように、声帯の筋肉も薄くなり振動が弱まります。その結果、声がかすれる・声量が落ちるといった変化が出てきます。
これを「老人性発声障害」と呼び、70歳以降によく見られる症状です。
風邪や感染症による炎症
風邪やインフルエンザの後に、声のかすれが長引くこともあります。高齢者は回復力が低下しているため、若い人より症状が長引く傾向があります。
逆流性食道炎
胃酸がのどまで上がってくることで声帯を刺激し、声がかすれることがあります。
夜間や起床時に声が出にくい場合は、この逆流が関係しているかもしれません。
神経や脳の病気
パーキンソン病や脳梗塞など、神経に関わる病気によって声帯がうまく動かなくなることがあります。急に声が出なくなった、話し方が変わった場合は、すぐに医師の診察が必要です。
声帯の病気
声帯ポリープや声帯がんなど、声帯そのものに病気が起きている場合もあります。
特に「2週間以上声のかすれが続く」場合は、自己判断せず耳鼻咽喉科で検査を受けましょう。
放置してはいけない危険なサイン
高齢者の声のかすれは、自然な老化と病気のサインが混ざっています。
次のような症状がある場合は注意してください。
- 2週間以上、声のかすれが続く
- 急に声が出にくくなった
- のどの違和感や痛みがある
- 痰に血が混じる、体重減少が見られる
- 声のかすれと一緒に「食べづらさ」「むせ」がある
これらの症状は、声帯がんや神経疾患など重大な病気につながることがあります。
日本耳鼻咽喉科学会でも「2週間以上続く声のかすれは耳鼻咽喉科受診を」と呼びかけています。(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会公式サイト)。
声がかすれると生活にどんな影響がある?
声が出にくいと、日常生活でさまざまな支障が出てきます。
- 会話が伝わらず、本人が話すのを控えるようになる
- 電話や買い物など、人とのやりとりがストレスになる
- 食事中にむせやすくなる
- 外出や趣味の参加が減り、閉じこもりがちになる
声はコミュニケーションだけでなく、食べる力や社会参加にも直結しています。そのため「声がかすれる」を軽く見てしまうと、介護のリスクが高まる可能性もあるのです。
「声が出しにくい」→「話すのがおっくう」→「人と関わるのが減る」という負のスパイラルになる前に、早めの対処が大切です。

どこに相談したらいいの?
まずは耳鼻咽喉科を受診し、声帯や喉の異常がないかを確認するのがおすすめです。
病気が見つからなかった場合でも、音声リハビリが必要なケースは言語聴覚士(ST)が対応します。
- 総合病院のリハビリ科・耳鼻科など
- 地域の高齢者向け通所リハビリ
- 市町村の介護予防教室や健康相談窓口
地域によっては、自治体が高齢者向けの「声のトレーニング教室」を実施している場合もあります。
広報誌などで確認してみましょう。

“声トレ”で改善できるケースも
すぐに病院受診が必要なケースもありますが、筋力の衰えによる声の変化であれば、リハビリ(音声訓練)で改善できる場合もあります。
- 深呼吸や腹式呼吸で声を出す練習
- 音読や早口言葉
- 会話の機会を増やす習慣
自宅でできる予防やトレーニングを知りたい方は、関連記事「声がかすれる高齢者へ|家でできる“声トレ”5選」もぜひご覧ください。

まとめ
高齢者の声がかすれる原因は「加齢による自然な変化」から「病気のサイン」まで幅広くあります。特に 2週間以上続く声のかすれ は要注意。耳鼻咽喉科を受診し、早期発見・早期対応を心がけましょう。
また、日常生活の工夫や家族のサポートで改善できることもあります。
声は生活の質を支える大切な力です。