高齢者の「むせ」や「咳」、もしかして“誤嚥”かも?
高齢の家族が「食事中によくむせる」「飲み込みに時間がかかる」「咳が増えた」
…そんな変化、見逃していませんか?
高齢者のむせの原因のひとつとしてよく知られているのが **「誤嚥」**です。
そして、その結果として発症しやすいのが 「誤嚥性肺炎」。
実は、厚生労働省の統計によると、肺炎は高齢者の死因の上位。
特に、嚥下機能の低下によって唾液や食べ物が気管に入り込む「誤嚥」が原因となるケースが少なくありません。
でも安心してください!
高齢者のむせ・咳は、日々のトレーニングや生活習慣で予防や改善が可能です。
本記事では、言語聴覚士歴15年以上の私が、現場で実際に効果があった
自宅でできる誤嚥性肺炎予防トレーニングと生活の工夫5選をわかりやすくご紹介します。

自宅でできる!誤嚥性肺炎予防のためのトレーニングと生活習慣 5選
①食前の「嚥下体操」で飲み込みスイッチをオン
食事前に首・口・舌・肩・手などを動かす体操を取り入れることで、全身の血行が促進され、嚥下に関わる筋肉も刺激されます。
飲み込む力=嚥下機能は、意識して使わないと年齢とともに自然と衰えていくもの。
誤嚥性肺炎を予防するためには、日常的なトレーニングで機能を維持することが重要です。
嚥下体操:
- 深呼吸(鼻から吸って、口から吐きましょう/慣れてきたら時間を長くしていきます)
- 首回し(ゆっくりとしたスピードで)
- 肩の上下運動(10回を目指して)
- 「パ・タ・カ・ラ」発声(それぞれ5回ずつ、口の動きを意識して発声しましょう)
- 唇をすぼめたり横に引いたりする(「う」と「い」の口を交互に5回ずつ)
※ 特にストローで飲み物を飲んだときにむせる方は、口唇や舌、のど周りの筋肉が弱っている可能性があります。
こうした体操は、むせを減らし、飲み込みをスムーズにすることを目的に行っています。
②姿勢を整えて、安全に食べる
**誤嚥性肺炎予防の第一歩は、「正しい姿勢づくり」**です。
- 椅子に深く腰かける
- 足裏を床にしっかりつける
- 軽くあごを引く
寝たきりの方も、ベッドの背をなるべく上げて「座っている姿勢」に近づける工夫を。
体が傾いていると誤嚥のリスクは高まるため、食事中の姿勢にはぜひ注意してください。
③食後すぐに横にならない!誤嚥を防ぐ30分
食後すぐに横になると、食べた物や胃の内容物が逆流して気管に入り、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
食後30分は座って過ごすことが大切!
- 食後は背もたれにもたれてテレビを見る
- 会話を楽しむ
- 本や新聞を読む など
“休憩の時間”も誤嚥性肺炎予防に効果的な習慣になりますよ。
④毎日の「声出し習慣」でのどを鍛える
声を出すことも、実は立派な嚥下トレーニング!
嚥下を動かす筋肉と、話すときに使う筋肉が同じだからです。
声を出すことで、のどや声帯、呼吸に関わる筋肉が働く = 飲み込みやすくなる
おすすめの声出し方法:
- 「あー」と大きな声で発声(男性:20秒、女性:15秒以上を目指す)
- 歌を歌う(童謡や唱歌、カラオケ・お経もOK)
- 新聞の見出しや短い文章を音読(早口言葉もおすすめ)
食事以外の時間にも「のどを使う」ことで、誤嚥の予防効果が期待できます。
➄口の中を清潔に保ち、細菌を減らす
口の中が不衛生なままだと、繁殖した細菌が唾液や食べ物と一緒に気管に入り、肺炎を引き起こすリスクがあります。
※口から食事をとらない方(胃から直接栄養をとる胃ろうなど)でも、唾液誤嚥で肺炎になるので、注意が必要です。
日常の口腔ケアで予防!
- 毎食後の歯磨き
- 口腔保湿ジェルの活用
- 入れ歯の洗浄・清掃
- 舌や頬の内側も優しく清掃
高齢になるとドライマウスになりやすいので、口腔内の保湿にも気をつけましょう。

【まとめ】
毎日のちょっとした習慣が「むせ」や「誤嚥」を防ぎます。
誤嚥性肺炎は年齢とともにリスクが高まる一方で、日々のちょっとしたトレーニングや生活習慣の工夫でしっかり予防することができます。
今回ご紹介した5つの方法は、どれも今日から無理なく取り入れられるものばかり。
まずは、食事前の嚥下体操から1つ、今夜の食事前に取り入れてみませんか?
もし、以下のような変化が見られたら、一度専門機関へ相談することをおすすめします。
- 食事中の咳が増えた
- 飲み込むのに時間がかかる
- 水分を飲んでもむせる
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