はじめに
家で食事をしているとき、「パンを食べてゴホッとした」「みかんやももの果汁でむせた」「お茶を飲んだらサラッと気管に入りそうになった」
――そんな経験はありませんか?
高齢者は年齢とともに飲み込みにくさが増え、むせやすい食べ物が少しずつ増えてきます。
私の母も薬の錠剤を飲むときに「詰まりそうで飲みにくい」と言っていたことがあり、小さな変化がサインになることもあります。
実際に介護施設でも、麺類や汁物、果物などでむせる方を多く見てきました。
これは特別なことではなく、高齢者がむせやすい食材には共通の特徴があるのです。
高齢者がむせやすい食べ物の特徴3選
水分が少なく口の中でまとまりにくいもの
- 食パン
- ゆで卵
- パサパサした焼き魚
こうしたむせやすい食べ物は口の中でばらけやすく、飲み込みづらさからむせにつながります。
つるっと入り込みやすいもの
- 麺類(そうめん・ラーメン)
- 汁物(味噌汁、スープ)
- 冷たいお茶や水
一気に気管に流れ込んでしまいやすく、「サラッと入ってゴホッ」となる方が少なくありません。
弾力や繊維が強いもの
- イカやエビ(チャーハンの具など)
- こんにゃく
- きのこ類
- 繊維の多い葉物野菜
よく噛んでもなかなか細かくならず、口に残りやすいため、誤嚥やむせの原因になります。

むせやすい食材リスト(保存版)
| 分類 | 食材例 | むせやすい理由 |
|---|---|---|
| 主食 | パン、そうめん、ラーメン | パサつきやすい/つるっと入り込みやすい |
| おかず | 餃子・シュウマイ、ハンバーグ、チャーハンのイカやエビ、こんにゃく、きのこ類 | 肉汁やソースが流れ込みやすい/弾力や繊維が強い |
| 果物 | みかん、もも | 果汁が飛び出して気管に入りやすい |
| 飲み物 | 水、お茶、炭酸 | サラサラ流れ込みやすく、むせの原因に |
このリストは、家庭の食卓でよく出る高齢者の食事に直結する内容です。
普段から意識することで安全な食べ方の工夫につながります。

高齢者の食事を安全に楽しむための工夫5選
【イラスト③:工夫シーン(パン粥、麺をスプーンにのせる、水にとろみなど)】
「むせやすいから食べさせない」ではなく、工夫して“おいしく安全に食べる”ことが大切です。
ここでは在宅でできる高齢者の食事工夫を紹介します。
主食の工夫
- パン → 牛乳やスープに浸す、パン粥にする
- ごはん → おかゆや雑炊にするとまとまりやすい
麺類の工夫
- 一口大に切ってから提供する
- れんげやスプーンに少量ずつのせて食べる(すすらずに食べられる)
- 汁と麺を分けて盛りつける
おかずの工夫
- 餃子・シュウマイ → 肉汁を冷ましてから、小さく切る
- ハンバーグ → ソースは別皿にし、とろみをつけると安心
- イカやエビ → やわらかい魚に代える/細かく刻んで混ぜる
果物の工夫
- みかん・もも → 小さくカットし、一口ずつ
- 缶詰やゼリータイプを利用する
飲み物の工夫
- 水・お茶・炭酸 → とろみをつける
- ストローは避け、コップから少量ずつ飲む
こうした高齢者の安全な食べ方を意識するだけで、毎日の食事がぐっと安心になります。

食のユニバーサルデザインとは?
高齢になると「かむ力」や「飲み込む力」に差が出てきます。
そこで役立つのが ユニバーサルデザインフード(UDF) です。
UDFの区分(日本介護食品協議会)
| 区分 | 特徴 | 食べやすさの目安 | 例 |
|---|---|---|---|
| 区分1 | 容易にかめる | 普通食よりやわらかめ | 煮魚、やわらかい煮物 |
| 区分2 | 歯ぐきでつぶせる | 舌や歯ぐきで押しつぶせる | やわらかパン、かぼちゃの煮物 |
| 区分3 | 舌でつぶせる | かまずに舌でつぶせる | ムース状のおかず、ゼリー |
| 区分4 | 均質でなめらか | 噛まずに飲み込める状態 | ミキサー食、プリン状の食品 |
「むせやすいから食べない」のではなく、今の状態に合わせて食事工夫をすることが重要です。
UDFは高齢者の誤嚥予防にもつながります。
むせが続くときの対応
「たまにむせる」程度なら工夫で解決できますが、毎日のようにむせる/咳き込みが増えた/食欲が落ちてきた などの変化は注意が必要です。
受診や相談の目安
- 食事中にむせが頻繁に起こる
- 水やお茶を飲むとゴホゴホすることが増えた
- 体重が減ってきた
- 声がガラガラする・痰が絡む
こうしたサインがあるときは、耳鼻咽喉科や嚥下外来、言語聴覚士(ST) に相談するのが安心です。
早めの対応が高齢者の誤嚥予防につながります。
まとめ
高齢者の食事では、日常的な食材でもむせやすくなります。
大切なのは「避ける」のではなく、工夫しておいしく安全に食べることです。
- パンや麺類は小さく切る・浸す・スプーンで食べる
- 果物や汁物は小分けにして、とろみや調理法を工夫
- UDFなど段階に応じた食事を取り入れる
そして「むせ」が続くときは早めの受診や相談を。高齢者の誤嚥予防にもつながります。
今日からできる小さな工夫で、家族の食卓をもっと安全で楽しいものにしていきましょう。
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参考リンク(外部サイト)
- 日本介護食品協議会|ユニバーサルデザインフードについて
- 厚生労働省『摂食嚥下障害の理解と支援(高齢者の食事支援)』(PDF)

