はじめに
久しぶりに実家に帰ったとき、母の食べ方を見てハッとしたことはありませんか?
- 「いつもより早く食べている」
- 「飲み込むスピードが早すぎる」
噛まずに丸めて飲み込む様子に気づくと、心配になります。
特に長期休暇や帰省のタイミングは、普段の生活から離れている分、親の変化を感じやすいものです。
「むせていないから大丈夫」と思いがちですが、見えないリスクが潜んでいます。

丸飲みの危険性とは
身体に起こる主なリスク
リスク | 内容 | 参考文献 |
---|---|---|
誤嚥性肺炎 | 噛まずに飲み込むと食べ物が喉に残りやすく、気管に入りやすくなり、誤嚥性肺炎の原因となる | [1] |
胃や喉の負担 | 丸飲みを続けると胃や喉に余計な負担がかかり、消化力が低下している高齢者には体への負担になる | [2] |
栄養吸収の効率低下 | 噛むことで唾液と混ざり消化がスムーズになるが、丸飲みだと消化吸収が悪くなる | [3] |
丸飲みを起こしやすい食材✅
注意すべき食材・工夫例
食材・飲み物 | 丸飲みしやすい理由 | 工夫例 |
---|---|---|
繊維質の野菜(ごぼう、セロリ) | 噛みにくく、丸めて飲み込みやすい | 細かくカット・柔らかく煮る |
固い肉類 | 噛む力が足りないと丸飲み | 薄切り・小さくカット・柔らかく調理 |
芋類(さつまいも、じゃがいも) | 塊が大きいと丸飲みしやすい | 小さく切る・蒸して柔らかく |
麺類 | すする・まとめて飲み込みやすい | 短くカット・よく噛むよう声かけ |
ドロッとした飲み物(スムージー、ミルク) | 口の中でまとまりやすく丸飲みしやすい | 少量ずつ飲む |

家庭で見つける丸飲みのサイン ✅
行動からわかる兆候
- ✅ 食べるスピードがいつもより早い
- ✅ 飲み物をまとめてゴクゴク飲む
- ✅ 食べ物を丸めて飲み込む仕草
- ✅ せっかちな性格や疲れていると丸飲みしやすい
チェックのコツ
- ✅ 食事時間や食べるペースを観察する
- ✅ 横から姿を見て口の動きを確認する
- ✅ 変化をメモしておく

家庭でできる簡単な対策 ✅
日常的に取り入れやすい方法
対策 | 内容 | ポイント |
---|---|---|
一口の量を減らす | 一度に大きく口に運ばない | 丸飲み防止 |
噛む回数を意識させる声かけ | 「よく噛んでね」と声かけ | 噛む習慣づけ |
姿勢を整える | 背筋を伸ばし座る位置を調整 | 飲み込みやすくなる |
食材の柔らかさ・形状を工夫 | 繊維質野菜、肉類、芋類はひと口大にカットや柔らかめ調理 | 安全度UP【4】 |
食事環境を整える | テレビやスマホを控え、静かな環境で食事 | 集中して噛むことができる |
食後の体勢に注意 | 食後すぐ横にならない、座ったまま少し休む | 誤嚥リスク軽減 |

受診や専門家相談の目安 ✅
相談したほうがよいサイン
- ✅ 食事中にむせることが増えた
- ✅ 咳き込みや声のかすれがある
- ✅ 飲み込みに違和感がある
言語聴覚士(ST)や医師に相談することで、安全な食べ方の個別アドバイスが受けられます【5】。
まとめ
- 丸飲みは「むせないから安心」ではない。窒息リスクが上がる。
- 家庭でできる観察と工夫で誤嚥リスクを下げられる。
- 咀嚼力に応じた食事形態の調整や、固いものへの工夫が重要。
こうした小さな配慮の積み重ねが、誤嚥予防と安全な食生活につながります。
次回の記事では、「上を向いて飲むと誤嚥リスクが高まる理由」と、安全な飲み方の具体例を紹介します。家庭での小さな工夫が、高齢者の安全と健康につながります。
引用・参考文献
- 厚生労働省. 高齢者の誤嚥性肺炎予防ガイドライン. 2020.
- 日本老年医学会. 高齢者の食事・嚥下障害管理. 2019.
- 石井直方. 高齢者の咀嚼と消化効率. 栄養科学, 2018; 41(2): 123-130.
- 佐藤智子. 高齢者在宅食事指導マニュアル. 医学書院, 2021.
- 日本言語聴覚士協会. STによる高齢者の嚥下評価と介入. 2022.