はじめに
冬になると、「最近むせるようになった」「食事中に咳き込むことが増えた」という声をよく聞きます。
寒さや乾燥で口の中が渇き、水分摂取量も減ることで、食べ物がまとまりにくくなり、むせやすくなる季節です。
特に、家族で囲む鍋料理は温かくやわらかい具材が多く、「食べやすそう」と思われがちですが、
実は高齢者にとっては注意が必要なメニューです。
この記事では、高齢者が鍋料理でむせる原因と、安全に楽しむための工夫を現役STの視点から解説します。

鍋や汁物でむせやすい理由
具と汁を同時に口へ入れやすい
鍋や汁物は、具材と汁を一緒に口へ入れやすい点が特徴です。
汁を飲み込むタイミングで具が喉に残ると、誤って気道に入りやすくなります。
調理と盛り付けでリスクを減らす
具材を小さめに切ったり、汁の量を減らすだけでもむせのリスクは下がります。
一口量を調整し、汁気を軽くきってから盛り付けることを意識しましょう。
“じゅわっ”と汁が出る食材に注意
鍋やおでんの中の危険食材
ゆで卵、豆腐、がんもどき、しいたけ、つみれなど、噛むと中から汁が出る食材は要注意です。
やわらかそうに見えても、汁が先に喉へ流れることで固形物と液体が分離し、飲み込みのタイミングがずれてむせやすくなります。
安全に食べるためのひと工夫
・汁気が多い具材は少し冷ましてから提供
・小さく切ることで一口量を減らす
・汁を軽くきってから盛り付けると、誤嚥のリスクを減らせます。
私自身、こうした具材を食べた際に汁が先に喉へ流れてむせてしまう方を何度も見てきました。
とくに、汁を多く含んだがんもどきや豆腐類は注意が必要です。

食事前の“ひと工夫”でむせを予防
口を潤して飲み込みやすく
冬は乾燥で口腔内が渇きやすいため、食前に唾液腺マッサージやお茶を一口飲むだけでも違います。
口を潤すことで食べ物がまとまりやすくなり、誤嚥(ごえん)の予防につながります。
姿勢・環境も大切
- 背中をしっかり支える椅子に座る
- 顎を少し引く姿勢で食べる
- 会話しながらでも“ひと口ずつ”を意識
こうした小さな意識が、誤嚥性肺炎の予防につながります。
「とろみは嫌」…でも外すと危険「とろみは嫌」…でも外すと危険
とろみを外すことで起きるリスク
退院後や在宅介護で「とろみが嫌」と言われ、自己判断で外してしまうケースは少なくありません。
デイサービスを利用する方で、とろみを外した結果、誤嚥性肺炎を繰り返す方もいます。
本人の希望を尊重しつつも、「安全に食べるための工夫」として上手に使うことが大切です。
とろみを“続けやすく”する工夫
- 味を変えにくいとろみ剤を選ぶ
- 汁物だけ・朝だけなど部分的に取り入れる
- 家族も一緒にとろみ食を体験してみる
「我慢して続ける」ではなく、「安心して食べられる工夫」として提案できると受け入れやすくなります。
食事中のむせは“体のサイン”
毎回むせるのは要注意
「たまにむせるだけだから」と軽く見られがちですが、毎回むせる場合は嚥下障害のサインです。
特に水分や汁物でむせる方は注意が必要。
こんな変化も要注意
- 声がかすれる・痰が増えた
- 食後に咳き込むことが多い
- 体重減少・食欲低下
これらは、飲み込み機能の低下や誤嚥性肺炎のサインであることもあります。
「高齢だから仕方ない」と決めつけず、異変を感じたら早めに専門医へ相談しましょう。
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まとめ:高齢者の鍋は“避ける”より“工夫して楽しむ”
鍋料理は家族が囲むあたたかい時間の象徴です。
「危ないからやめる」のではなく、少しの工夫で安全に楽しむことができます。
安全に鍋を楽しむポイント
- 具材は小さめに
- 汁を少なめにとる
- 食前に口を潤す
- 熱すぎるものは少し冷ます
こうした小さな工夫が、冬の“むせ”を減らし、誤嚥性肺炎の予防にもつながります。
食事は「栄養」だけでなく「楽しみ」。
その楽しみを続けるために、家族の気づきと支えが何よりの予防策です。


