親のペットロスが心配…そっと見守る?家族にできることと相談したいサイン

愛犬を亡くし、犬の写真を見つめる高齢女性に成人した娘が寄り添う様子 話す食べる相談室

はじめに

実家の犬が亡くなってから、母が毎日泣いている。

散歩へ行かなくなり、電話をしても「大丈夫」としか言わない。

悲しむ時間も必要だと思うけれど、このままそっと見守っていてよいのだろうか。

高齢の親がペットロスで落ち込んでいると、家族はどのように接すればよいか迷うことがあります。

長年一緒に暮らした犬は、親にとって大切な家族です。

毎日の話し相手であり、散歩へ出かけるきっかけや、生きがいになっていた方もいるでしょう。

私は言語聴覚士(ST)として高齢者やご家族と関わる一方で、30年近く犬と暮らしてきました。

この記事では、親のペットロスをそっと見守ってよいのか、離れて暮らす家族は何を確認すればよいのか、家族にできることと相談を考えたいサインを紹介します。

📌 ペットロスから立ち直るまでの期間は、人によって異なります。

悲しみの長さだけで判断せず、食事や睡眠、外出など、親の生活が以前と比べてどう変わったかを見守りましょう。

親が毎日泣いている…そっと見守っても大丈夫?

悲しむのは自然な反応

長年一緒に暮らした犬を亡くし、深い悲しみや喪失感を抱くのは自然なことです。

写真を見て涙を流す、思い出を何度も話す、犬用品を片づけられないといった様子だけで、すぐに病気とは判断できません。

「早く元気になって」

「いつまで泣いているの」

と急かさず、親の悲しみを見守りましょう。

後から悲しくなることもある

犬が亡くなった直後は、葬儀や手続きで気が張り、少し時間がたってから悲しみを強く感じることもあります。

また、写真や散歩道、命日などをきっかけに、悲しみがぶり返す場合もあるでしょう。

回復までの期間や過程は人によって異なります。

「何か月たったから、もう立ち直るべき」と決める必要はありません。

悲しみが戻ったときも、親の気持ちを受け止めましょう。

ペットロス症候群に診断基準はある?相談したいサインも確認

「毎日泣いているけれど、ペットロス症候群なのでは?」

と心配になる方もいるでしょう。

ペットロス症候群には、「チェック項目に何個当てはまれば診断」と判断できる統一された診断基準はありません。

まずは、犬を亡くしてから親の生活が以前と比べてどう変わったかを確認しましょう。

🐾 親の生活にこんな変化はありませんか?

☑ 食事や水分を十分に取れていない

☑ 夜眠れない状態が続いている

☑ 散歩をやめ、ほとんど外へ出なくなった

☑ 家族や友人との会話が減った

☑ 家事や身の回りのことが難しくなった

☑ 薬の飲み忘れや通院の中断が増えた

この一覧は、ペットロス症候群を診断するためのものではなく、家族が生活の変化に気付くための目安です。

犬が亡くなると、散歩による運動だけでなく、近所の人や犬仲間との交流も減ることがあります。

閉じこもる状態が続けば、活動量が減り、体力低下やフレイルも心配です。

🔗 親の体力や生活の変化が気になる方はこちら

「親のフレイルサインを見逃さない|家族が気付きたい変化」

生活への影響が2週間以上続いている

ペットロスから回復するまでの期間には個人差があるため、「2週間たっても悲しいから病気」という意味ではありません。

一方、強い気分の落ち込みや何も楽しめない状態、食欲や睡眠の大きな乱れなどが2週間以上続く場合は、うつ病や不安症、不眠症などが表れている可能性もあります。

食事や水分を十分に取れない、ほとんど眠れない、日常生活が難しい状態が続く場合は、早めに医療機関や相談窓口へ相談しましょう。

期間だけでなく、親が少しずつ生活を取り戻しているか、時間とともに悪化していないかを見ることも大切です。

参考:国分寺イーストクリニック「ペットロスからの回復|悲しみとの向き合い方」

「犬のところへ行きたい」と話すとき

「生きていても仕方ない」

「消えてしまいたい」

「犬のところへ行きたい」

このような言葉が聞かれた場合は、「ペットロスで悲しいから言っているだけ」と決めつけないことが大切です。

⚠️ 死をほのめかす言葉がある場合は、一人にせず、家族だけで抱え込まないでください。

親の話を聞き、できるだけ早く医療機関や相談窓口へ相談しましょう。

受診を迷ったときの相談先

親の様子が心配でも、「どこへ相談すればよいか分からない」と迷うこともあるでしょう。

🏥 親の様子が心配なときの相談先

・かかりつけ医

・地域包括支援センター

・保健所・保健センター

・精神保健福祉センター

・心療内科・精神科

どこへ相談すればよいか迷う場合は、まず普段の体調を知るかかりつけ医へ相談してもよいでしょう。

高齢の親の生活全体が心配な場合は、地域包括支援センターでも相談できます。

離れて暮らす親のペットロス|電話で何を確認する?

愛犬を亡くした高齢女性が、自宅で離れて暮らす家族とスマートフォンのビデオ通話をする様子

親と離れて暮らしていると、食事や睡眠、外出の様子を直接見ることができません。

電話で「大丈夫?」と聞いても、子どもに心配をかけたくなくて、「大丈夫だよ」と答える親もいるでしょう。

そのため、「元気?」だけで終わらせず、会話の中で生活の様子を具体的に聞いてみましょう。

📞 離れて暮らす親へ聞いてみたいこと

「今日は何を食べた?」

「最近、眠れている?」

「買い物や散歩で外に出た?」

「最近、誰かと話した?」

質問攻めにならないよう、自分の話も交えながら自然に聞いてみましょう。

また、電話に出ない日が増えた、声が以前より小さくなった、会話が極端に短くなったなど、以前との違いも変化に気付く手がかりになります。

心配な様子があれば、連絡の回数を少し増やしたり、可能であれば一度訪問したりしましょう。

親のペットロスに家族ができること

悲しみや後悔を否定せずに聞く

親が犬の思い出や最期の様子を何度も話すことがあります。

「もっと早く病院へ連れていけばよかった」

「自分のせいで死んでしまった」

と、自分を責める方もいるでしょう。

そのようなときは、すぐに「そんなことないよ」「もう考えても仕方ないよ」と話を終わらせず、まずは親の気持ちを聞いてみましょう。

家族の中でペットロスへの温度差があっても、悲しみの深さを比べる必要はありません。

犬の写真やベッド、おもちゃも、親の気持ちを確認せずに片づけないようにしましょう。

離れて暮らしていても外とのつながりを支える

犬が亡くなると、朝夕の散歩だけでなく、近所の人との会話や毎日の役割もなくなることがあります。

親と離れて暮らしている場合は、一緒に外出できなくても、外へ出るきっかけを探すことはできます。

例えば、

・自治体の広報やホームページで、体操教室や地域サロンを探す

・親が以前楽しんでいた趣味や活動を調べる

・次に帰省したとき、一緒に見学する

・近くに住む親族や友人へ、ときどき声をかけてもらう

など、遠方からできる支援もあります。

ただし、悲しんでいる親へ新しい活動を急いで勧める必要はありません。

「こんな教室があるみたいだけど、興味ある?」

と親の気持ちを聞きながら、外や人とつながるきっかけを少しずつ探してみましょう。

地域の体操教室で同年代の女性と交流する高齢女性を、入口から娘が見守る様子

一人で過ごす時間に会話のきっかけをつくる

犬に毎日話しかけていた親は、犬が亡くなったことで、家の中で声を出したり、誰かとやり取りしたりする機会も減っているかもしれません。

家族が電話をする、一緒に犬の写真を整理するなど、親が気持ちを話せる時間をつくりましょう。

一人で過ごす時間が長い場合は、おしゃべり人形やコミュニケーションロボットも、声を出したり笑ったりするきっかけになることがあります。

ただし、亡くなった犬の代わりとして勧めるのではなく、親が興味を持った場合の選択肢の一つとして考えましょう。

🔗 一人で過ごす親の会話が減っていると感じた方はこちら

「高齢者は“誰と話すか”も大切|会話相手で変わる表情や反応」

「もう犬は飼わない」と言う親に新しい犬を勧めてもいい?

愛犬を亡くした親が、

「もう犬は飼わない」

「こんなにつらいなら、飼わなければよかった」

と話すことがあります。

犬を嫌いになったのではなく、「もう同じ別れを経験したくない」という深い悲しみから出た言葉かもしれません。

「新しい犬を飼えば元気になるよ」と急いで勧める必要はありません。

新しい犬を迎えて前向きになる方もいますが、亡くなった犬の代わりになるわけではありません。

「もう犬は飼わない」という親の気持ちも、一つの選択として尊重しましょう。

時間がたち、親自身が「また犬と暮らしたい」と希望したときは、年齢や体力、家族の支援、将来誰が犬を引き取るかまで一緒に考えることが大切です。

🔗 高齢になってから犬を迎えるか迷っている方はこちら

「犬を飼う最後の年齢は?70代・80代から迎える前に家族で考えたいこと」

まとめ|悲しみの長さより親の暮らしの変化を見守ろう

愛犬を亡くした悲しみの深さや、ペットロスから立ち直るまでの期間は人によって異なります。

時間がたってから悲しみが強くなったり、写真や命日をきっかけにぶり返したりすることもあります。

大切なのは、「いつまで泣いているか」だけで判断するのではなく、食事や睡眠、外出、人との交流など、親の生活が以前と比べてどう変わったかを見ることです。

離れて暮らしている場合は、「大丈夫?」だけでなく、食事や睡眠などを会話の中で自然に聞いてみましょう。

生活への影響が2週間以上続いている、時間とともに悪化している、死をほのめかす言葉がある場合は、家族だけで抱え込まず、医療機関や相談窓口へ相談することも大切です。

親の悲しみに寄り添いながら、犬がいなくなった後の暮らしや人とのつながりも、家族で少しずつ支えていきましょう。

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