はじめに
「最近、話しかけても返事が少ない」
「食卓でも黙っていることが増えた気がする…」
親の“話さなくなる変化”に気づくと、
真っ先に「認知症の始まり?」と不安になる方は多いものです。
話す量が減るのは 認知症だけが理由ではありません。
体の疲れ、声の出しづらさ、乾燥、気持ちの落ち込み、生活リズムの変化など、
いくつかの要因が重なって
「話したくても話せない」状態 になっていることがあります。
そして、家族の声かけや環境づくりによって
少しずつ“ひとこと”が出やすくなることもあります。
この記事では、現役ST(言語聴覚士)の視点から、
今日から家庭でできる“やさしいアプローチ” を7つ紹介します。

親が話さなくなるときに考えられる6つの原因
「話さない=認知症」と思われがちですが、実際は次の複数の要因が重なっています。
- 聴こえづらさ(加齢性難聴)
- 声が出にくい・喉の乾燥
- 体力低下・疲労
- 気持ちの落ち込み・意欲低下
- 会話の機会そのものが減っている
- 認知機能の低下(理解する力の変化)
これらは単独で起こるのではなく、
複数が同時に進むことで、話すハードルが一気に上がる のが特徴です。
原因を深追いしすぎるよりも、
「話しやすい環境づくり」と「声を出すきっかけづくり」 が改善の近道です。
自然に“ひとこと”が出るようになる実践アプローチ7選

【アプローチ①】毎日のルーティンで“声を出す習慣”を作る
声を出す筋力は、使わないと弱ります。
一方で あいさつの言葉は最後まで残りやすく、成功体験につながりやすい です。
- 朝「おはよう」
- 食事前の「いただきます」
- 外出時の「行ってきます」
- 一日の終わりの「ありがとう」
👉 文より単語のほうが出やすい
👉 言語リハでも“単語での成功体験”が非常に重要
【アプローチ②】テレビは“情報過多のニュース”より“ゆっくり系映像”を
高齢者にとってニュース番組は情報量が多く、
「聞いているだけで疲れる → 話さなくなる」 ことがよくあります。
代わりに会話を引き出しやすいのは:
- 自然の風景
- 動物番組
- 昔の歌番組
- ゆっくり進む旅番組
👉 ラジオは“音だけ”で認知負荷が高く、向かないケースも。
【アプローチ③】ことわざ・歌の“途中まで言う”方法(STがよく使う技法)
補完課題とも呼ばれ、家庭でも簡単にできます。
- 「犬も歩けば……?」
- 「渡る世間は……?」
- 昔の歌を一緒に口ずさむ
👉 語尾だけ言うと自然に続きが出てくる
👉 成功体験が“話したい気持ち”につながる
【アプローチ④】“作業しながら話す”は言葉が出やすい
心理的な負担が減り、構えずに話せるため、STもよく使う方法です。
- 洗濯物をたたむ
- テーブルを拭く
- 料理の下準備を一緒にする
👉 目線が合わなくてよい → 緊張が下がり、言葉が出やすい
【アプローチ⑤】短時間の散歩・日光浴で脳を活性化する
外の刺激は、脳の働きを高め、会話のきっかけにもなります。
- 日光は「セロトニン(意欲UPホルモン)」を増やす
- 外気・季節の匂い・景色が“会話の材料”になる
- 冬は特に日照時間が短いため効果が出やすい
【アプローチ⑥】聞き返しづらさ(難聴)を減らすと会話が戻る
聴こえづらいと、会話は負担になります。
- 正面からゆっくり話す
- 声の高さは少し高めに
- 1文を短く
- テレビの音量に変化がないか確認
👉 聞き返したくない → 話さない、という流れは非常に多い
必要に応じて耳鼻科や補聴器の相談も検討を。
【アプローチ⑦】“反応しやすい質問”で会話を助ける
会話のハードルは「考える量」で決まります。
- 「今日は寒いね」→ 共感しやすい
- 「これ好き?」→ はい・いいえで答えやすい
- 「どれがいい?」→ 選択肢を2つにする
👉まずは、考えなくても答えられる“やさしい質問”がおすすめです。
無理に会話を広げようとしなくても大丈夫。自然なやり取りを大切にしましょう。
受診・相談を考えるタイミング

次のような変化が 数週間〜1か月ほど続く場合 は、
かかりつけ医や専門職への相談を検討しましょう。
- 返事がほとんどない
- 声が弱い・かすれる
- 食事量が減っている
- 反応が遅い、ぼんやりしている
- むせが増えた、飲み込みづらそう
この目安は、
厚生労働省・日本老年医学会・言語聴覚士協会 が推奨する「生活の変化に早めに気づき、専門相談へつなげる」方針に基づいています。
内部リンク
会話が減る背景には、「認知」「声の変化」「飲み込み」「意欲」など複数の要因が関わります。
気になる方は、以下の記事も参考にしてくださいね。
- 最近、親が話さなくなった?認知症だけじゃない原因と寄り添い方
→ 話さなくなる理由の基礎が分かります。 - 高齢者の声がかすれる原因とは?冬に増える理由と受診の目安
→ 声の変化で会話が減るケースに役立ちます。 - 保存版】冬に増える高齢者の“むせ”|よくある原因と誤嚥を防ぐやさしい対策まとめ
→ 乾燥や口の変化による“むせ・声の弱り”が会話に影響する仕組みを解説。
まとめ:親の“沈黙”には必ず理由がある
親が話さなくなる背景には、
認知症だけでなく、体調・声・気持ち・環境といった複数の要因が重なっています。
大切なのは、
「話さないことを責める」のではなく、
“話しやすい環境”を整えること。
今日できる小さな工夫が、
明日の「ひとこと」につながるかもしれません。
🟦外部リンク
日本老年医学会|高齢者の生活・健康に関する情報
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/
厚生労働省|認知症を知る・備える
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188745.html
公益社団法人 認知症の人と家族の会|認知症の基礎知識
https://www.alzheimer.or.jp/?page_id=85

