はじめに

「最近、おばあちゃんの声が小さくなって聞き取りづらいのよね」

「うちの母もよ。昔はもっとハキハキ話してたのに…」
こんな小さな変化に気づいたことはありませんか?
私自身、言語聴覚士として働いていると、ご家族から“声のかすれ”や“小声”の相談を受けることも増えてきました。
高齢者の声がかすれる状態は、加齢による自然な変化のこともありますが、実は病気のサインであることもあります。
特に冬は空気の乾燥で声帯の潤いが失われやすく、かすれが悪化しやすい季節です。
この記事では、高齢者の声がかすれる主な原因や、放置してはいけない危険なサイン、家族ができるサポートの方法について解説します。
声の変化に気づいたとき、家族との会話が“早期発見”のヒントになります。

高齢者の声がかすれる主な原因5選
まず、声がかすれる原因は大きく5つに分けられます。
| 主な原因 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| ① 加齢による声帯の衰え | 声がかすれる・声量が落ちる | のどの筋力低下に注意 |
| ② 風邪や感染症による炎症 | 炎症が長引き声が出にくい | 2週間以上続けば受診 |
| ③ 逆流性食道炎による刺激 | 胃酸がのどを刺激 | 就寝前の飲食を控える |
| ④ 神経や脳の病気 | 声が小さくこもる | 急な変化はすぐ受診 |
| ⑤ 声帯の病気 | 声のかすれ・痛み | 耳鼻咽喉科で検査を |
それぞれを順に見ていきましょう。
① 加齢による声帯の衰え(老人性発声障害)
年齢を重ねると、声帯の筋肉も少しずつ弱くなります。
振動が弱まることで声がかすれる・声量が落ちる・長く話すと疲れるなどの変化が起こります。
これを「老人性発声障害」と呼び、70歳以降に多く見られます。
「電話の声が聞き取りにくい」「話すと息が続かない」などの変化も、のどの筋力低下が関係しているかもしれません。
特に冬場は空気が乾燥し、声帯の粘膜が乾きやすくなります。
加齢による弱りに乾燥が重なると、息っぽさやかすれがより目立ちやすくなるため注意が必要です。
② 風邪や感染症による炎症
風邪やインフルエンザのあと、声のかすれが長引くことがあります。
高齢者は回復がゆっくりで、炎症が続きやすいのが特徴です。
のどの免疫力も落ちているため、若い人よりも声が出にくく、治りにくくなります。
「いつもの風邪だから」と放っておかず、2週間以上続く場合は耳鼻咽喉科へ。
さらに、冬は暖房で室内の湿度が下がり、のどの粘膜が乾燥しやすくなります。
湿度が40%を下回ると声帯の潤いが失われ、炎症が長引く原因にもなるため、室内の加湿も重要です。
③ 逆流性食道炎による刺激
胃酸がのどまで上がると、声帯が刺激されてかすれることがあります。
特に夜や朝に声が出にくい場合は、逆流が関係している可能性があります。
高齢者は姿勢の変化や服薬の影響で、逆流性食道炎を起こしやすくなります。
「寝る前に食べる」「枕が低い」などの習慣を見直すだけでも、改善につながります。
④ 神経や脳の病気による声の変化
パーキンソン病や脳梗塞など、神経の働きが弱まると声帯がうまく動かなくなります。
その結果、声が小さくなる・こもる・かすれるなどの変化が起きます。
急に声が出なくなったり、話し方が変わった場合は、脳梗塞などの初期サインのことも。早めの受診が必要です。
⑤ 声帯の病気(ポリープ・がんなど)
声帯ポリープや声帯がんなど、声帯そのものに異常がある場合もあります。
「2週間以上かすれが続く」「のどが痛む」「痰に血が混じる」ときは要注意です。
耳鼻咽喉科で早めに検査を受けましょう。
💡ポイント
- 原因の多くは**「老化+生活習慣+病気の影響」**が重なって起こります。
- 「声が出にくい」は体のサイン。
- 家族が気づいたら、早めに医療機関へ相談を。
放置してはいけない危険なサイン
「少しかすれているだけだから大丈夫」と思っていたら、数週間経っても戻らない――。
高齢者の声のかすれには、老化と病気のサインが混ざっています。
次のような症状がある場合は注意が必要です。
- 2週間以上、声のかすれが続く
- 急に声が出にくくなった
- のどの違和感や痛みがある
- 痰に血が混じる、体重減少がある
- 声のかすれと一緒に「食べづらさ」「むせ」がある
これらは、声帯がんや神経疾患のサインのことも。
「おかしいな」と感じたら、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
声がかすれると生活にどんな影響がある?
声が出にくいと、日常生活にも影響が出ます。
- 会話が伝わらず、話すのを控えるようになる
- 電話や買い物などがストレスになる
- 食事中にむせやすくなる
- 外出や趣味の参加が減り、閉じこもりがちになる
声はコミュニケーションだけでなく、食べる力や社会参加にも関わる大切な機能です。
「声が出にくい」→「話すのが面倒」→「人と関わらない」という悪循環になる前に、早めに対処しましょう。

どこに相談したらいいの?
まずは耳鼻咽喉科で声帯や喉の異常がないか確認しましょう。
病気がなくても、「声が出にくい」「息が続かない」といった場合は、言語聴覚士(ST)による音声リハビリで改善できることがあります。
相談できる場所の例:
- 総合病院の耳鼻咽喉科・リハビリ科
- 通所リハビリ(デイケア)
- 市町村の介護予防教室や健康相談窓口
地域によっては「声のトレーニング教室」を開催しているところもあります。
広報誌や市役所の福祉課をチェックしてみましょう。

まとめ|家族の気づきが早期発見につながる
高齢者の声がかすれる原因は、「加齢による変化」から「病気のサイン」までさまざまです。
特に2週間以上続く声のかすれは要注意。
耳鼻咽喉科で早めに検査を受け、早期発見・早期対応を心がけましょう。
家族の気づきが、健康を守る第一歩です。
声の変化を感じたら、「どうしたの?」と声をかけてあげてください。
その一言が、安心と回復へのきっかけになります。
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